2009年7月23日木曜日

アベ追悼

アベフトシが死んだ。

アベというミュージシャンは成功したギタリストの中で、特異な存在だった。
速弾きをするわけではない。特殊な音色を出すわけでもなかった。
テレキャスターをマーシャルにつっこんで、目盛は全て10。みたいな。
ただ、パンクに惚れ込み、気付いたらプロになっていた、というようなギタリストだった。
それでも彼はキッズに強烈なインパクトを与え続けた。
彼のカッティングは世界を見渡しても唯一無二だったし、鬼気迫るパフォーマンスは簡単に真似できる代物じゃなかった。

ミッシェルガンエレファントというバンドは、そんな強烈な個性を受け入れるだけの器があった。
あのバンドは 4 人の強烈な個性で成り立っているようなバンドだった。
彼ら 1 人 1 人が強烈な個性の中でのみ映える人たちだったからこそ、彼らはお互いを必要とした。

4 人とも音楽的に進化的なアーティストではない。年月と共に表現の深みを増していき、それが魅力となるタイプのミュージシャンたちだった。表現する世界観は変化し続けるが、技術は 1st Album でほとんど完成されていた。1 人 1 人の技術はデビューしたときからほとんど変化していない。
それでも彼らの出すグルーブは時を経るごとに強烈さを増し、リスナーを惹きつけ続けた。
音楽が、世界観を強烈に表現できるということや、人と音楽をやることは 1 人の人間のポテンシャルを簡単に越えてしまうことを骨の髄まで教えてくれた。

僕は God Jazz という DVD を見て以降、解散するまでは本当に良くミッシェルを聴いた。
一応、これからミッシェルを聴こうという人に言うが、下手にベスト盤を聴くと負けです。何も人生の足しにならない。
解散ライブの DVD を見るのもだめだ。God Jazz Time というミッシェルが最も演奏がタイトで、選曲もベストだったときの DVD を見て、High Time, Gear Blues, カサノバスネイク, RODEO TANDEM BEAT SPECTER, Sabrina Heaven のオリジナルアルバムを聴くのが良い。
僕はこの中で、 High Time と RODEO TANDEM BEAT SPECTER と Sabrina Heaven が特に好きだった。Sabrina no heaven はもう損なわれてしまっているから、ミッシェルを好きになってから聴けば良い。

ミッシェルは後期になって、チバがより柔軟な音楽、柔軟なミュージシャンを必要としだした時点から彼らは解散に向かい、終わった。あのバンドの唯一のグルーブが好きだったから、解散後の各メンバーの活動はそれほど真剣に追っていた訳じゃないけれど、その後のメンバーの活動が対照的だったことは知っている。

彼らのようなミュージシャンは強烈な仲間を必要とする。
チバは照井を見つけ Rosso を開始したし、クハラも再びチバと The Birthday というバンドを組むなど、仲間に恵まれた。ウエノも今は the Hiatus というバンドで強烈な仲間を見つけ、充実した音楽活動を送っている (僕は the Hiatus が好きだ)。

一方でアベだけは終始仲間を見つけられずにいるようだった。何人かのアーティストをサポートしたものの、何度も言うように、彼はサポートミュージシャンって柄ではない。そんな柔軟な技術もない。

ミッシェルにいるときのアベには、強烈な音楽を作る仲間がいて、彼はただ自分の好きな音で、自分の思うままに、好きなようにギターを弾くことができ、その全ての預けられた。そんな仲間はそうそう簡単に見つけられるものではない。それでも、歌うでもなく、曲を書くでもない彼には、解散後は、強烈な相棒を見つけて欲しかった。

相手が彼の個性に見合うだけの個性なり強烈な音楽をしていない限り、彼の存在は目立ちすぎてしまう。そうなったときに、音楽はバランスを失う。ウニの入ったラーメンのように不味い。

そうやって仲間を探している過程で彼は死んだ。
彼は本当に音楽しかないようなとても不器用な男のように見えた。
仲間を見つけられなかった唯一無二の男が、才能を使い切るこなく死んだ。
そこに僕は悲しさや寂しさを感じる。